真夏の太陽がやわらかく山肌を照らし、木々の葉が風に揺れていました。
会津地方の深い緑に包まれるようにして、今回訪れたのは、歴史の中に今も生き続ける宿場町──
福島県・大内宿(おおうちじゅく)
日々の慌ただしさを少し脇に置いて、ただ静かに、ゆっくりと流れる時間のなかで、心がじんわりとほどけていく。
そんなひとときを求めて、この地に足を運びました。
まずは駐車場から、旅がはじまる
車を停めたのは、大内宿の入り口近くにある駐車場。
車を降りた瞬間、山から吹き下ろす風が肌をなで、空気の中にほのかな木の香りが混じっていることに気づきました。
遠くで鳥が鳴く声が聞こえ、旅のスイッチが静かに入る、そんな始まりでした。
道中の運転の疲れも、ここに来た瞬間すっとほどけていくようで、自然と背筋が伸びるような気がしました。
茅葺き屋根の町並みを、ゆっくり歩く
木製の橋を渡ると、視界の先には茅葺き屋根の家々が並ぶ町並みが広がります。
それはまるで、江戸時代の絵巻物から抜け出してきたかのような風景でした。
中央には用水路が流れ、子どもたちが水遊びに興じる姿があり、道の両脇には民芸品やお菓子を扱う小さなお店が並びます。
風鈴の音が涼やかに鳴り、軒先に吊るされたとうもろこしが夏の日差しを浴びてきらきらと輝いていました。
ゆっくり歩いて、時折お店を覗き、手作りの草木染めや木の器に心奪われる。
この通りでは、どこにいても“懐かしさ”が心に沁み込んでくるのです。
坂の上から町並みを見下ろして
通りの奥に小さな登山道のような坂道があり、その先にある展望スポットへと足を運びました。
少し息を切らせて木立を抜けた先、ふいに視界が開けます。
そこに広がっていたのは、まさに絶景でした。
茅葺き屋根の町並みが一本道に沿って連なり、その背景に広がる緑の山々と空のグラデーション。
「これぞ大内宿」と呼ぶにふさわしい風景が、静かに眼下に佇んでいました。
風がそっと頬をなで、鳥のさえずりが響くなかで見下ろすこの景色は、まさに時間が止まったような美しさでした。
名物・ねぎそばで、ちょっとユニークな昼食を
町へ戻り、お腹もちょうど空いたところで、楽しみにしていた名物「ねぎそば」をいただくことに。
お店の座敷に上がり、涼しい畳の感触にほっと一息ついた頃、目の前に運ばれてきたのが──一本の白ネギと一緒に盛られたお蕎麦でした。
この「ねぎそば(高遠そば)」は、箸の代わりに白ネギでそばをすくって食べるという、ちょっとユニークな一品。
ネギの香りと冷たいそばの喉ごしが相性抜群で、大根おろしと鰹節の風味が食欲を加速させます。
初めはうまく掴めずに笑ってしまいましたが、慣れてくると「これ、意外と楽しい!」と夢中に。
ネギをそのままかじると、ピリッとした刺激とみずみずしさが口いっぱいに広がり、暑さで疲れた体に心地よく染みわたりました。
冷たい柑橘のジュースも、喉をすっと通り抜け、体の中まで爽やかにしてくれます。
食事というより、これは思い出を味わう体験──そんなふうに感じました。
旅の終わりに、心に残ったもの
茅葺き屋根の風景も、展望台からの眺めも、ねぎそばの味も。
どれもが“ここでしか出会えない”という特別な輝きを放っていました。
観光地でありながら、どこか人の暮らしが感じられる温もりがあり、目に映るすべてが心の奥にそっと語りかけてくるようでした。
「また来よう」
そう自然と思える場所に出会えたことが、今回の旅で何よりの喜びだったのかもしれません。
大内宿へのアクセス情報
🚗 自家用車でのアクセス
大内宿は山間に位置しているため、車でのアクセスがもっとも便利です。
■ 東京方面から:
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東北自動車道「白河IC」または「那須IC」下車
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国道289号や国道118号経由で約1時間30分
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所要時間:約3時間30分(高速道路利用)
■ 会津若松から:
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国道118号 → 国道121号 → 県道131号経由で約50分〜1時間
■ 駐車場について:
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大内宿入り口に**大型の有料駐車場(普通車:1回500円)**があります
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観光シーズンやイベント時は混雑するため、午前中の到着がおすすめです
🚃🚌 公共交通機関でのアクセス
公共交通で訪れる場合は、鉄道+バスの乗り継ぎが必要です。
■ 最寄り駅:会津鉄道「湯野上温泉駅」
ここから大内宿まではバスまたはタクシーで移動します。
■ バス利用(猿游号/さるゆうごう)※季節運行あり
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期間限定で「湯野上温泉駅〜大内宿」間を結ぶシャトルバスが運行
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運行日:春〜秋の土日祝・GW・お盆など(事前確認推奨)
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片道:約20分
■ タクシー利用
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湯野上温泉駅からタクシーで約15分
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相乗り利用もおすすめ(駅前で相談可能)