世界唯一の「さざえ堂」と白虎隊の記憶をたどる、飯盛山の旅

さざえ堂 旅ブログ

福島県会津若松市。
この美しい城下町の中でも、特に強い“想い”が宿る場所が――飯盛山(いいもりやま)です。

会津藩の悲劇として語り継がれる「白虎隊」の終焉の地として知られるこの場所には、単なる史跡とは違う、静かで深い祈りのような空気が漂っています。
けれど飯盛山の魅力はそれだけにとどまりません。

この山には、世界に一つしかない建築「さざえ堂」、幕末の資料が集まる白虎隊記念館、自然の音に心が洗われる水路の景観など、五感で楽しめる見どころがぎゅっと詰まっているのです。

今回は、そんな飯盛山を歩いて体感した旅の記録を、たっぷりの写真とともにお届けします。

旅のはじまりは、のどかな駐車場から

まず車を降りて目に入るのは、のどかで静かな市営観光駐車場。
広々としていて停めやすく、トイレもすぐそばにあるので、小さなお子様連れのご家族やご年配の方にも優しい設計です。

飯盛山 駐車場

駐車場から道を渡ると、もうそこは飯盛山の参道
両脇には昔ながらのお土産屋さんや食事処が軒を連ねており、山へと続く石段を正面に望むこの風景は、どこか懐かしく、温かい雰囲気に包まれています。

見上げれば荘厳、歩けば汗と達成感——長い石段と「動く歩道」

飯盛山といえば、有名なのが石段。その数、なんと183段。
この石段を登るのが一つの旅の儀式のようなものですが、なかなかの勾配に気後れする方も多いかもしれません。

飯盛山 階段

でも大丈夫。右手には「スロープコンベア(動く歩道)」が整備されていて、どなたでも楽に山の上へアクセスできるようになっています。

飯盛山 動く歩道

機械的な音はせず、静かに、しかししっかりと山の中腹まで運んでくれるスロープは、自然との調和も意識された造りです。

白虎隊記念館で出会う、会津の「誇り」と「悲しみ」

動く歩道を使わずに、すぐに現れるのが白虎隊記念館
ここでは、会津藩の武士道精神、そして幕末の動乱の中で命を落とした白虎隊士たちの姿が、写真や遺品、模型などを通してリアルに伝えられています。

白虎隊記念館

中でも印象的なのは、隊士の遺書や当時の軍装。
読みながら思わず息を飲み、心が締めつけられるような気持ちになる展示の数々は、「彼らがなぜ戦ったのか」を現代に生きる私たちに静かに問いかけてきます。

この記念館を訪れることで、単に「観光地としての飯盛山」ではなく、命の重みと尊厳を学ぶ場所としての意味を実感できるはずです。

白虎隊が通ったと言われる「戸ノ口堰洞穴(とのくちぜきどうけつ)」

記念館の奥へ進むと、さざえ堂までの案内板が現れます。さざえ堂案内板

案内板に沿って進むと、木漏れ日が優しく降り注ぐ森の中に、小さな池のような水辺が現れます。
よく目を凝らすと、その先に見えるのが「戸ノ口堰洞穴」。

戸ノ口堰洞穴

この洞穴は、白虎隊士たちが鶴ヶ城を目指す際に通り抜けたとされる水路の一部。
実際に中に入ることはできませんが、口を開けた洞の先に流れる水を見つめていると、不思議と時間が巻き戻るような感覚になります。

さらに周囲には勢いよく流れる水路があり、その音が絶えず耳に届きます。
水が岩を叩き、カーブを描きながら流れる様子は、生命の躍動を感じさせ、自然の癒しに満ちていました。

戸ノ口堰洞穴 用水路

そして、世界唯一の木造建築「さざえ堂」へ

戸ノ口堰洞穴を後にし、先に進むと見えてくる建物があります。

さざえ堂

飯盛山の最大の見どころといえば、やはりこの建物——さざえ堂(正式名:円通三匝堂)です。

さざえ堂

その最大の特徴は、中に入るとらせん状に登っていき、決して同じ道を戻らずに出口にたどり着ける構造
いわゆる“スパイラル構造”の内部は、木の香りに包まれた静かな空間で、天井や壁に施された彫刻、梁の複雑な組み方に目を奪われます。

外観も見事で、パッと見ただけでは三重塔のように見えるその姿は、見る角度によってさまざまな表情を見せてくれます。

この不思議な建物は、1796年に建立されたもの。
中にはかつて三十三観音像が安置されており、参拝者はらせんを登りながら順に拝めるようになっていたとか。

時代を経てもなお立ち続けるその姿には、「人の信仰」と「建築美」が見事に融合した力強さが感じられました。

さざえ堂

反対側からも撮影

さざえ堂

外側からじっくりと観察してみると、木の梁や柱が絶妙な角度で斜めに組まれていて、まるで巨大な立体パズルのよう
見れば見るほど、その複雑さに引き込まれ、「一体どうやってこの建物を建てたのか」と、自然と想像力が掻き立てられます。

古びた木の質感、風雨に耐えてきた柱の存在感、細部にまで行き届いた職人の仕事。
写真では決して伝わらない迫力と、木が醸し出すぬくもりが、この建物全体からにじみ出ているのです。

それはまさに、現地でこの建物を前にした者にしか味わえない、唯一無二の体験
単なる観光スポットを超えて、「ここに来てよかった」と心から感じられる、そんな建築との出会いでした。

歴史と自然が融合する、心に残る体験

今回歩いた飯盛山は、単なる史跡巡りでは終わりませんでした。

静かな森、流れる水、遠くに見える鶴ヶ城の屋根、少年たちが命をかけた物語。
それらが不思議とひとつに重なり合い、心の奥深くに染み込んでいくような感覚を与えてくれる場所でした。

この地を訪れて初めて、会津という土地の持つ“誇り”と“痛み”がわかる気がします。
そして、それを未来へ語り継いでいくのが、今を生きる私たちの役目なのかもしれません。


📝旅のポイントまとめ

  • アクセス:JR会津若松駅よりバスで約10分(「飯盛山下」下車)
  • 駐車場:観光客用の無料駐車場あり(トイレも併設)
  • スロープコンベア:有料(大人250円前後)が便利でおすすめ
  • 白虎隊記念館:資料が非常に豊富。じっくり見たい方は1時間以上確保を
  • さざえ堂:内部も見学可能。靴を脱いで上がります
  • 周辺の自然:夏は水の音と緑に癒されます。虫除け対策をすると快適◎

▶次回予告:白虎隊士たちの眠る場所へ

今回の旅では、白虎隊の通った道と、さざえ堂の建築美を中心にご紹介しました。
けれど、まだ飯盛山には重要な場所があります。

それが――白虎隊十九士の墓所です。

次回の記事では、彼らが最後に立った場所から見た景色、遺された詩や墓碑、そして「なぜ自刃を選んだのか」というテーマに迫っていきたいと思います。
歴史に触れ、心で感じる旅。どうぞ次回もお楽しみに。

タイトルとURLをコピーしました